会長の時間

会長の時間06

2025年08月21日

日田ロータリークラブ会長 小ヶ内聡行

 

「経営者のための相続対策 ― 未来へつなぐために」

皆さま、こんにちは。

本日は税理士としての立場から、「経営者のための相続対策」について、お話します。

相続というと、どこか“自分にはまだ関係ない”と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、特に会社や事業を持つ経営者にとって、相続は「遺された人の問題」ではなく、「今、備えるべき経営課題」なのです。

  1. 相続が「経営危機」になることも

私が実際に関わったケースですが、当社のお客さんではないある地元企業の社長から相続の申告をお願いされたときの話す。

会社の株式の大半を社長個人が保有していたため、相続が発生した瞬間、遺族が数千万円規模の相続税を負担することになりました。

会社自体には資産があっても、個人の手元には現金が少ない。

結果的に、会社の株式や土地を売却するしかなくなり、経営の安定性が大きく損なわれてしまったのです。

つまり、相続対策の不備が、そのまま企業の存続リスクにつながってしまったということです。

  1. 会社を守るための“相続準備”とは?

では、経営者ができる相続対策とは何でしょうか?ポイントは大きく3つです。

(1)自社株の評価と対策

中小企業の株式は、社長個人が保有しているケースが多くあります。

しかしその株式には「評価額」がつき、相続時には税金の対象になります。

事前に自社株評価をしておくこと、必要に応じて株式の分散・移転(贈与など)を検討することが重要です。

(2)納税資金の準備

相続税がいくらかかるかは、早めに試算しておくことで対策が立てられます。

たとえば、生命保険を活用して納税用の資金を準備しておくのも一つの方法です。

(3)事業承継計画の明文化

後継者が決まっていても、社員や家族への説明が曖昧だとトラブルの元になります。「誰に、いつ、どうやって継がせるか」という事業承継の青写真を、早めに共有しておくことが、相続と経営の混乱を防ぎます。

  1. 相続は「お金」ではなく「思い」をつなぐもの

相続対策というと、どうしても「税金をいかに減らすか」という話になりがちですが、本質は「思いをどうやって未来に伝えるか」だと私は思います。

たとえば、会社の理念、地域への責任、従業員への感謝。こうした“見えない資産”こそ、後継者にしっかり引き継がれるように、今のうちから備えておくことが、経営者としての役割ではないでしょうか。

  1. ロータリアンとしての視点

ロータリーの活動でも、「次の世代につなぐ」「地域とともに歩む」という価値観はとても大切にされています。企業経営も同じで、今だけでなく、「次の時代に責任を持つ」という発想が求められる時代です。そのための第一歩が、“自分の相続について考えること”。それは、家族への思いやりであり、社員や取引先への安心であり、地域との信頼の証でもあると感じています。

  1. まとめ

相続は、いつか必ずやってくる「未来の現実」です。

だからこそ、「まだ先」ではなく、「今から備えること」が、会社と家族を守る最大の防衛策になります。”争族”ではなく、“想続”へ。経営者としての責任を果たし、安心してバトンを渡せるように、皆さまにもぜひ一度、自社とご自身の相続対策を見直していただけたらと思います。本日はご清聴、ありがとうございました。