会長の時間22
日田ロータリークラブ会長 井上太香美
いままで柄にもなく堅苦しい話題ばかり話してきましたので、今日は軽い話をしたいと思ったのですが、やっぱり重い話になります。私の趣味の一つに旅行がありますが、その中で印象に残ったものをお話します。京都に行かれた方は多いと思いますが、北部の方に行かれた方は少ないと思います。私がどうしても行かねばならないと決めていた市があります。そこは舞鶴市です。明治時代に日本海側唯一の海軍鎮守府が置かれ軍港として発展しました。現在も海上自衛隊の基地として多くの艦船が所属しています。また京都府北部の主要都市として行政機関等が集中している年ですが、1945年の終戦後56年までシベリアに抑留されていた人たちが、ボロボロになって引き上げてきた港でもあります。
私が訪ねたところは、舞鶴引揚記念館です。福知山まで鉄路で行き、そこからレンタカーを利用して行きました。ウイークデーだったからでしょうか、観光客はおらず私一人の見学となりました。抑留者の生活様式が展示されていましたが、こんな現実があったのかと言葉を失ってしまいました。そして得心したことは、「これが戦争なんだ、これが戦争に負けるということなんだ。」ということでした。戦争にきれいな戦争も、汚い戦争もありません。人が人を殺し合うのが戦争ですから、その現場にいる人に理性があるわけがありません。どんなことがあっても、絶対に戦争の口火を切ってはならないと思いを新たにしました。
展示館の中に「端野セイ」さんのコーナーがありました。歌謡曲「岸壁の母」のモデルになった人です。引揚船が返ってくるたびに帰らぬ子を待ちわびていたという伝説の人です。
二葉百合子の熱唱もありましたが、思わず涙が出てくる歌です。端野セイさんが帰らぬ息子を待っていたという桟橋に立って、同じような思いを胸に、ここで肉親の帰りを待っていた多くの母親の心を思うと、胸が詰まる思いでした。昨今国際情勢を語るとき、勇ましい言葉を述べる人がいますが、そのような人達に訪れて欲しい場所でした。