会長の時間

会長の時間19 平成25年11月21日(水)

2013年11月27日

「戦略的対応」 2013.11.27

日田ロータリークラブ会長 橋本信一郎

 

あるアメリカの戦略研究者が中国には戦略がない。もし戦略があるならば、何故あれだけ他国が反感を持つようなことをするのかと書いてありました。そして、中国の孫子の兵法とは、相手を秩序や規則を狂わせる戦略だそうです。

 

11月23日、中国は尖閣諸島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏を設定しました。これは非常に危険なことで、相互の戦闘機が接近し、思わぬ衝突を招く可能性があります。

しかし、私は疑問に思うのは、こちらの混乱を起こさせるという中国の狙いに嵌りかけたのではないかということです。

 

中国は、民間航空会社が識別圏内の飛行計画の提出を拒めば緊急措置を取るとしていましたので、日航、全日空など国内4社は、23日以降、中国当局に対して飛行計画を提出したそうです。

 

25日に外務省の斉木事務次官が中国大使を呼んで、日本側は飛行計画の提出に応じる考えはないと通告。これに対して中国大使は「民間航空機の飛行の自由を妨げるものではない」と回答したので、26日に国交省は「官民一体で対応すべく航空会社は飛行計画を中国当局に提出しないように協力願いたい」と要請して、27日以降は飛行計画の提出を止めることになったそうです。

 

確かに航空機の安全確保が一番大切ではあります。しかし、飛行計画を提出することは中国の防空識別圏と管轄権を認めることです。そもそも、識別圏は領空に近づく国籍不明機が敵か味方かを判断するために領空の外側に設ける空域で管轄権は認められません。公海上空は飛行自由であり何ら制限を課すべきものではなく、識別圏を通過する航空会社に対して、飛行計画の提出を求める権限はないそうです。

 

この区域を飛ぶアメリカの民間航空機があるかどうか知りませんが、果たして飛行計画を提出したのでしょうか。今回は外務省・国交省の早い動きにより、一応の解決を見ていますが、航空各社が飛行計画を提出したことについて私は釈然としないものを感じます。

 

今朝のニュースによれば、米軍のB52爆撃機2機が日本時間の26日、中国が設定した防空識別圏内を事前通報なしに飛行しました。中国側から2機に対する呼びかけや戦闘機の緊急発進(スクランブル)はなかったそうです。

 

米政府は(1)防空識別圏を認めない(2)飛行経路の事前通報や無線の開放など、中国が要求する措置には応じない(3)米国の軍事作戦遂行に一切変更はない-との立場を明確にしています。

なぜ、このような原則を素早く明確にできるのだろうかと思います。

 

こちらの対応がバラバラにならないような明確な方針と態度を立てることが、相手の戦略に乗らないために必要なのではないかと思います。