会長の時間18 平成24年11月21日(水)
「子供を可愛がった日本人」 2012.11.21
日田ロータリークラブ会長 橋本信一郎
最近は、育児放棄、幼児虐待など、子供をとりまく環境には厳しいものがあります。いつからこんな殺伐とした世の中になったのでしょう。
「江戸の子育て」という本があります。この本を読むと、江戸時代の日本人の子育ての様子が良く分かるので一部を紹介します。当時の子供たちは信じられないほどかわいがられて育てられていました。
明治初期に来日した英国婦人イザベラ・バードは「私はこれほど自分の子供をかわいがる人々を見たことがない。常に子供を抱いたり背負ったりしている。子供の遊んでいる様子をじっと見守り、時に一緒に遊んでやったりもする」と書いています。
ちなみに、戦国時代に来日した宣教師も同じように、子供たちがこんなに可愛がられて、こんなに安心して遊んでいる国は見たことがないと書いています。
江戸時代の大人たちは、毎晩、子供のそばで、おかしくもない子供の話も面白そうな様子で聞き、親からも年相応のことを話して聞かせ、子供を中心に団欒を共に楽しんでいたようです。
スキンシップも現代よりはるかに豊かで、乳をくわえて寝たり、抱かれて寝たりするだけでなく、外出の帰りは、大抵、おんぶか抱っこでした。
肌と肌とを接してやると子供は良く寝るので、子供を裸にして抱いて寝、子供が乳を求めて母親のところに行けば、いつでも乳を飲んだり、舐めたりすることが出来たようです。
睡眠についても、現代では一人で寝させるのを自立と言っていますが、一人で寝かせた様子はありません。婆と寝て目覚めると婆の乳を舐めたり、爺と寝て昔話をしてもらったり、いつも誰かが添い寝していました。
ある日記には「孫を抱いて寝ると『おじいさ、百人一首を読んで』という。天智天皇の『秋の田の』と読んでやると、その通りに読む」とあります。
愛情たっぷりの中で、百人一首や、舌切り雀、花咲かせ爺、古の聖賢の話、大和の名将勇士の振舞いなど、年相応の物語を取りまぜ、寝物語に聞かせながら自然に手習いや書物に導くことが江戸の子育てであったようです。
文化年間、松前藩で捕虜生活を送ったロシア海軍少佐ゴローニンは「日本人は世界で最も教育の進んだ国民である。読み書きの出来ない人間や祖国の法律を知らない人間は一人もいない。一番大切なことは日本人が幼年時代から子弟に忍耐、質素、礼儀を極めてたくみに教え込むことである」と書いています。
今は核家族化して、爺や婆と一緒に住むことも少なくなりました。中には孫を触らせてもらえない爺や婆もいます。
もう、江戸時代に戻ることもできませんが、今の日本人の考え方を変えない限り、いくら制度をさわっても、お金を出しても、少子化も幼児の虐待も改善されることはないだろうと思います。